M-1グランプリ挑戦レポと得たもの

17 min read

この記事は「Pepabo CS Advent Calendar 2022」の8日目の記事です。昨日はべるさんの「なんでアウトプットに苦手意識があるんだろう?」でした。




はじめに

この記事タイトルに興味をもって読み始めていただいている方の多くは、「お笑い」に興味のある人なのではないかと思います。

実際、この記事を書いている新飼も、GMOペパボでカスタマーサービス職として働きつつ、趣味の一つとして、漫才・コントや大喜利などを見るのが好きな社会人の1人です。

本記事では、そんな社会人が漫才の頂上決戦「M-1グランプリ」に出場するために取り組んだ内容や実際に出場して気づいた点をお伝えしたいと思っています。

M-1グランプリってなに?

M-1グランプリは、プロ・フリー・アマチュア問わず、結成15年以内の2人以上の漫才師であれば、エントリーフィー(1組2,000円)を払うことで、誰でも出場できる漫才の賞レースです。




お笑いに興味がない人も、年末にテレビ(ABCテレビ・テレビ朝日系列)で生放送されているのを見たことがある、という方は多いのではないでしょうか。

余談ですが、プロやアマチュアの定義に関しては、以下のような考え方になります。

  • プロ:芸能事務所に所属し、漫才などのお笑いを本業としている人
  • フリー:事務所には所属していないが、お笑いに関する芸能活動で収益を得ている人
  • アマチュア:本業を別に持ち、お笑いがサークル活動や趣味の延長のような人

なぜ出ようと思ったのか

いろいろありますが、主に以下の3点です。

  • 30歳を迎えたので、新しいことを試したい
  • 自分の考えている「面白さ」が世の中にどう評価されるのか?と気になった
  • 同僚に元NSC生がいた

特に「同僚に元NSC生がいた」のが大きかったと思います。

同僚のことを、宮本くん(Facebook)といいますが、プライベートでも遊ぶ程度には仲も良く、お笑いに関する考えやセンスも把握していました。そういった意味では、「こいつとなら漫才できるかも」と思わせてくれたのが決め手だったかもしれません。

補足:NSC(エヌエスシー)とは、国内最大級のお笑い養成所「NSC吉本総合芸能学院」の通称です。ダウンタウンをはじめ、これまで数多くのスターを輩出しています。

舞台までの道程

M-1グランプリに挑戦することを双方で合意し、コンビを結成しました。私がボケで、宮本くんがツッコミです。

ここからは、エントリーから本番当日までの道程について説明していきます。ほぼノーカットで長いので、結果だけ見てもらうといいかもしれません。

「ノイエスブーフ」誕生

M-1グランプリに出場するには、規定のエントリーシートを運営元へ郵送する必要があります。

そこにコンビ名を記載する必要があるのですが、呆れるくらい決まりませんでした。コメダ珈琲に8時間くらい滞在して決まらず、そのまま解散したこともあります。無駄すぎ。

悩みの果てに、以下のような軸を決めて考えることになりました。

  • 二人の名前に由来している(アルコ&ピース方式)
  • インターネットで検索しても検索結果が0件(オリエンタルラジオ方式)

結果、新飼の「新」、宮本の「本」をドイツ語読みにして、合わせると「ノイエスブーフ」となりました。耳慣れない単語過ぎて、Googleの検索結果も0件。この世に存在しない単語を生み出した瞬間です。

あとから気付いたのですが、ワードセンスとか世界観が売りのコンビ名っぽくて恥ずかしいなと思いました。変えたい。

希望会場へのエントリー間に合わない問題

M-1グランプリのエントリー期間は、大体が6月下旬〜8月31日までなのですが、締め切る前から予選が開始するため、会場によってはエントリーが間に合わないケースが発生します。

案の定、私たちがコンビ名を決定した時には、希望していた福岡会場の日程が既に決まってしまっていました。ゴールから逆算していくスケジューリング能力がないことがバレてしまいましたね。

しかし、こんなことで諦める訳にはいきません。間に合いそうだった東京・大阪・名古屋の中から「名古屋」を選び、エントリーシートを投函しました。

ちなみに名古屋を選んだ理由ですが、少しでも通過の確率を上げるため、プロの割合が多い「東京・大阪」を避けようという消極的理由です。よく言うとリスクヘッジってやつです。

いや、ネタ作り難しすぎね?

意図しないトラブルはあったたものの、無事にエントリーを済ませた私たちは漫才のネタを作り始めました。そして避けて通れないのが、「産みの苦しみ」です。

私は当然ネタ作りなどしたことがないので、本やウェブの情報を収集しつつ、試行錯誤しながら作りました。楽観的に見ても、10/100点くらいのネタしか書けません。おかしい、もしかして私は無能だった…?と悶々としながら過ごす日々。

一方、元NSC生である宮本くんは、過去にネタ作りの経験もあります。以前「ネタを作るのは息をするようなもの」とすら言っていた記憶があります。そこで彼に頼ってみましたが、結果はダメでした。クリエイティブから長らく離れていた彼のネタ作成能力は、出涸らしになっていました。

形になったネタについては内容も面白かったのですが、1回戦はネタ時間が「2分」と決まっていることもあり、どう削っても時間内に収まりませんでした。

最終的には、私の作った「交番」というネタをやることになりました。オーソドックスなコント漫才です。アマチュアである私たちが「しゃべくり」で笑いを取るのは難しいと考えた結果です。

そして、この時点で残された期間はわずか1ヶ月弱。必死こいてネタ合わせをやります。

補足:コント漫才とは、「俺〇〇やってみたいんだよね」「俺〇〇やるからお前△△やって」等のセリフから始まり、特定の役に成り切り、対話を進める形式の漫才です。得意としている芸人として、サンドウィッチマン、和牛、真空ジェシカなどが挙げられます。

そして当日

私たちの1回戦は、2022年9月23日(金)です。出場時間の関係で、1泊2日の遠征です。

当日は福岡空港で合流し、愛知へ飛び立ちます。

Notion image

スターフライヤーは安いし機内も割と広い

Notion image

撮影を邪魔するのが好き

1時間30分ほどの空の旅を終え、名古屋に降り立ちます。

会場近くのホテルにチェックインを済ませ、出場時間までネタ合わせを繰り返します。この時ぐらいから、私のテンションはハイになり、宮本くんは軽く緊張している様子でした。

間も無くして会場に向かい、控え室(お客さんから丸見えスペース)で出番を待ちます。

Notion image

エントリーシールが謎の上質素材

Notion image

控え室アウェーすぎ

そして、コンビ名を呼ばれ、同じグループのコンビ5組と一緒に舞台袖に向かいます。スタッフのお姉さんが私たちのコンビ名を呼びづらそうにしてるのが印象的でした。

舞台袖では、前のコンビ達のネタや会場の笑い声が鮮明に聞こえます。そのせいもあってか、一気に緊張し始めてきました。脂汗すごい。ここまで緊張していなかったのに…。

あと完全に余談ですが、私たちの後ろのコンビ(プロ)から「今日、お客さん温かいですか?」と聞かれ、面食らった結果、「あ〜なんかウケてますねぇ↑(半音高い声)」と言わされたのも原因かもしれません。出番直前のど素人に聞かないでくれ!!!!!

結果

まぁ、1回戦敗退です。当たり前なんですが。

肝心の本番ですが、ボケ先行のネタなので、私がネタを飛ばすと終わるというプレッシャーも相まって、舞台上の記憶がほとんどありません。しかも最初のボケのセリフを飛ばしかけました。本当に悪かった。

宮本くんはわりと冷静に見れていたようで、ボケの半分程度はウケていたようです。会場の雰囲気が良く、笑ってくれるお客さんが多かったおかげもあると思います。

自己採点でいうと70点くらいでしょうか。ただし、「やり切った」という達成感込みです。客観的に見たら、ネタも弱く、演る方も弱いので、20点くらいだったかもしれません。

終わった後に宮本くんが「まだ漫才していたかった、もう終わるのかという気持ちがある」とか言ってた時は、こいつマジでお笑い好き過ぎ、と思いました。

あと、無茶振りに近かったにも関わらず、前向きに捉え、一緒に出場してくれた相方の彼には最大級の謝辞を述べたいと思います。でも、舞台に出ていく時に緊張をほぐすために背中叩いたのに、私にしてくれなかったことだけは、いまだに根に持ってます。次は叩いてくれよな。

何を得たのか

ここまで読むと、何も得てないのではないか?と思われるかもしれません。名古屋に旅行して、イベント感覚で舞台に上がって、勝手に緊張しただけだろ、と。

確かにそうなんですが、振り返ってみると、以下の能力が成長したと感じました。

  • 知識や経験をもとに新しいアイデアを生み出す能力(面白いネタを考える発想力)
  • 相手に物事をスムーズに伝える能力(ネタを相手に100%伝える伝達力)
  • 物事を成し遂げる能力(舞台上でネタをやり切る度胸)

当てつけかもしれませんが、特に「物事を成し遂げる能力」への効果を感じています。

もともと私は内向的な性格なので、人前に出て何かをやることに積極的な方ではありませんでした。ですが、M-1グランプリに出場して以降は完全に苦手意識が消えています。むしろ早く舞台に立たせてくれ!とすら思います。おそらくこれは、あの舞台でのスリルを味わったことで心の免疫力がついたことによる心境の変化だと思います。

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございました。

M-1グランプリの挑戦レポと、お笑いと普遍的な社会人のスキルにほんの少し親和性を感じた話でした。この記事の内容が、読んでいただけた方々の笑いや何かしらの参考になっていたら幸いです。

そしてアドベントカレンダーは、明日のko(こー)さんに続く!